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多くの候補生は最初の時点で姿を消してしまう。 テクニックは教えられても、この仕事をうまくやるのに必要な知性と若干の情熱を、彼らに植えつけることはできない。 国内のトラッカーのコア・グループ30名のうちの半数以上が5年以上この仕事を継続しており、なかには10年以上の者もいる。 きつい仕事だが、やみつきになる魅力もある。

トラッカーが用いるトラックシートは、われわれがこの調査に従事してきた20年以上の歳月をかけて進化してきた。 それは事業全体を通じての鍵であり、情報の集積および検索に関する技術(非デジタル部門)の発展の成果である。 初期のトラックシートには、購買行動について、およそ10の異なったパターンが記録された。 現在はこれがおよそ40にのぼっている。

トラックシートは調査プロジェクトのたびに改訂されるが、たいていはまず現場の詳細な地図の作成から始まる。 現場は商店のこともあれば、銀行、駐車場(ドライブスルーのプロジェクトの場合)、あるいは店内の特定の区画、売り場のこともある。 地図には出入り口と通路、ディスプレイ、棚、ラック、台、カウンターがすべて記入される。 さらにトラックシートには、買い物客の特徴(性別、人種、推定年齢、服装)と、トラッカーは買い物客のめぼしい行動をすべて計測し、カウントするだけでなく、その意味についてコメントすることも求められる。 観察を土台にした鋭い推理である。 これらのコメントが、ある環境と、その使われかたについてのさらにくわしい情報となる。

わが社の社員をリーダーとして3人から10人のグループで、アメリカ、カナダ、ヨーロッパ、南米、オーストラリアを股にかけ、およそ思いつくかぎりの小売業、銀行、ファストフード店、高級ブティック、倉庫のようなディスカウントストアのほか、それ以外のさまざまな店を訪れる。 国際業務の便宜と効率化をはかり3年前からはイタリアのミラノ、2年前からはオーストラリアのシドニーにも調査チームを駐在させている。

店の規模や標準的な客の滞店時間にもよるが、トラッカーは1日に50人までの買い物客を調査することができる。 通常、われわれは一つの現場に数名のトラッカーを配備し、一つのプロジェクトについて週末ごとに複数の都市にまたがる12、3カ所で追跡を実施する。

調査が終わるまでには、信じがたいほど膨大な情報がシートに記録される。 オフィスに戻ってきたトラックシートを、担当責任者がまる1日かけて「クリーニング」する、符号が判読できるか、埋めるべき欄がすべて埋まっているかどうかをたしかめるのだ。

赤のセーターとブルージーンズ姿で顎髭を生やした髪の薄い男性が、土曜日の午前11時7分に百貨店に入ってきて、まっすぐ1階の財布売場へ向かい、陳列されている12個のすべてを手に取り、または触れてみて、そのうち4つの値札をたしかめ、一つを選んで、11時16分に近くのネクタイの棚へ移り、7本のネクタイをなで、7本全部の素材表示をたしかめ、そのうち2本の値札をひっくり返し、結局は買わずにレジへ直行して選んだ財布の支払いをした。 そうそう、マネキンの前にしばらくたたずんで、マネキンが着ているジャケットの値札もたしかめていた。 それから11時23分にレジの行列の3番目に並び、順番がくるまで2分51秒待ち、クレジットカードで支払いをして、11時30分に店をでた。 つぎに、社内のデータ部がもう1日から2日かけてすべての情報を、すべてのトラックシートの記述を一つ残らずデータベースに入力する。

長年にわたり、わが社は数万ドルの資金と、コンピュータプログラマーとのフラストレーションに満ちた膨大な時間を費やして、このような業務に対応できるデータベース・システムを開発しようとしてきた。 問題は、毎回、同じ数字を同じように処理しているが、プロジェクトによってはやるべきことが少し異なる。

別種のデータを集め、新たに発見した事実を比較するのだ。 われわれは優秀なコンサルタントと契約し、半年間にわたってコンピュータ・システムの構築に挑戦した。
彼らはわれわれがプログラムに望むことをすべてリストアップするよう求めたが、われわれが毎週新たに6個ものリストをつけ加えるため、前の月からの彼らの努力は水泡に帰した。 それから、もちろん、プロジェクトの切り替えはすばやく行なわなくてはならない。
というわけで、プロジェクトごとにシステムを抜本的に変更する時間はない。 われわれは今日のプロジェクトのために新たな比較をする必要があるかもしれないが、その機能をまた使うのは7カ月後かもしれないのだ。 最近まで、われわれは業務の大半をマイクロソフトのエクセルに頼っていた。 エクセルはデータベース・プログラムではなく表計算ソフト、会計担当者が比較的単純なフラット計算をするためのものだ。 エクセルの美しさは、オープン・アーキテクチャにある。 ユーザーが起動していじくりまわし、性能をアップさせることが可能なのだ。

まさにそのとおりのことを、われわれはやってきた。 マイクロソフトが10年前に建造したすばらしい自転車を、われわれはデータ処理専用のオフロード走行車に改造したのだ。
現在は業務の大半をファイルメーカーとSPSSで処理しているが、いまでもエクセルでチェックしている。 現場からビデオテープが戻ってくると、また別の人間が最初から最後まで見直す。 店の規模にもよるが、10台のカメラを1日8時間特定のエリア、たとえば出入り口陳列棚など、に向けてまわしつづける。 われわれが撮影する営業中の商店のビデオは、年間2万時間にものぼる。

ビデオはさらに確実なデータも提供する。 たとえば調査目的の一つが、レジの設計が店の従業員の疲労にどのように影響しているかを探ることであれば、われわれはビデオとストップウォッチを使って、店員が一回の処理に要する時間が、午前10時と午後4時でどれほどちがうかを比較するかもしれない。

試着室にもって入ったジーンズを実際に買う割合、男……65%女……25%・コーンチップスを買う前に袋の栄養成分表示を読む客の割合、企業や学校のカフェテリア……18%町のサンドイッチショップ…2%と、調査すべき項目のリスト(われわれはデリバラブルと呼んでいる)は、プロジェクトのたびに増えていく。 最近数えたところでは、買い物客と商店のかかわりあいについて、およそ900もの異なる側面から測定されていた。 それらすべての結果として、われわれは店のなかでの人間の行動についてかなりの知識を得た。 この科学は、われわれの経験のなかから生みだされた、生き生きと息づいた学問である。

何が発見されるかまったくわからない。 そのときでさえ、自分たちの見たものの正体を理解するために立ち止まって考えなくてはならないことがある。
ショッピングの科学とは、あえて言うなら、調査、比較、分析を通して商店や商品を買い物客により適合させるための高度に実践的な学問だからだ。


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